脳卒中

脳卒中は、脳の動脈が詰まったり破裂したりして、脳組織が壊死する病気で、脳と血管が侵されるため、脳血管障害と呼ばれています。

中医学的にも心脳血管疾患で血管のトラブルによって起こる疾患と同じ考えです。

中医学的に脳卒中には、虚血性と出血性の2つのタイプがあります。

脳卒中の約80%は動脈が詰まる虚血性のタイプ

脳細胞に流れる血液が減ると、酸素とブドウ糖(糖)が十分に届かなくなります。

一過性脳虚血発作(TIA)は、ミニ脳卒中とも呼ばれ、脳梗塞の初期徴候です。

一過性脳虚血発作は、短時間だけ脳の一部へ流れる血液量が不足することが原因ですが、すぐに血流が回復するため、脳梗塞のように脳組織の壊死には至りません。

脳の内部や周囲に起きた出血を原因とする出血性脳卒中タイプ

このタイプの脳卒中は、血管の破裂によって血液が正常に流れなくなります。

血液が脳内部に漏れ、血液が脳組織に直接接触すると炎症を起こして瘢痕(はんこん)が出来ることがあり、てんかん発作の原因となります。

これら2つのタイプの脳卒中にとって重要な危険因子は、動脈硬化、高血圧、糖尿病、喫煙です。

世間でよく言われているメタボリックです。

動脈硬化は脳梗塞で重要な危険因子で、高血圧は脳出血でより重要な危険因子です。

脳出血その他の危険因子には、抗凝固薬、コカイン、アンフェタミンの使用、頭蓋内の動脈にできた動脈瘤、血管の奇形(動静脈奇形)、血管炎などがあります。

症状は、血管が詰まったり出血が起きた脳の領域によって異なります。

例えば、左脚の筋肉運動を受けもつ領域に血液を運んでいる動脈が詰まると、左脚に筋力低下や麻痺(まひ)が起こります。

右腕の触覚をコントロールしている脳領域が侵されると、右腕の感覚が失われます。

脳卒中は通常脳の片側だけに損傷を起こします。

脳の神経は途中で交差して反対側の体へ分布しているため、症状は脳が損傷した側と反対側の体に現れます。

最も一般的な初期症状は、体の左右どちらかの顔面と脚に突然筋力低下や麻痺が起こる、不明瞭な発語、突然錯乱してうまく言葉が話せなくなったり相手の話が理解できなくなる、特に片眼に起こる急激なぼやけや視力の損失、平衡感覚と協調運動の消失に伴う転倒、突然の激しい頭痛、体の片側に起こる腕または脚の知覚異常や感覚消失などです。

一過性虚血性発作の場合、症状は同じですが数分以内に消えます。

脳出血の症状は脳梗塞の症状とほぼ同じですが、さらに、突然の激しい頭痛、吐き気や嘔吐、一時的あるいは持続的な意識消失、非常に高い血圧などがみられます。

《推拿療法》
推拿療法は脳の可塑性(ある領域に異なる機能をもたせる能力)を高め、正常機能の回復、身体状況の維持と改善などです。

中医学的には脳卒中は気血失調によって出血と梗塞が起こると考えます。

「気は血を押し出す、血は気を運ぶ」と言う言葉があります。

気には血管内部で血を押し出す推動作用(宗気)と、血管から血が漏れないようにする固摂作用があると考えられていて、気が無くなると推動、固摂作用が出来なくなり、出血(離経血)や、梗塞(瘀血)を起こすと考えています。

推拿治療は気と血を補い、血を活発にし、離経血や瘀血を取り除くようにします。

気血の通りを良くして失われた機能回復を行い、筋肉の収縮してしまった部位を緩め、また弛緩してしまった筋肉部位も回復させ、関節の癒着を防ぎます。

特に鍼灸、中薬、西洋薬では出来ない「関節の癒着予防」はとても有効です。
また、鍼灸治療と漢方薬(中薬)の併用も有効です。
私が実際に重点的に行う刺激は「頭針」と言って頭にある通常のツボにではなく、「演舞区」「平衡区」「言語区」など区間に刺激を加えるものです。

例えば、失語が現れたら「言語区」の区間に刺激を加えるというものです。

ツボは歴史上、初めから点(ツボ)があった訳ではありません。

初期の時代は、「この辺りに刺激をしたら何々が良くなった。ここに刺激したらここも良くなった。」など区間や線で伝えていました。
ちょうどこれが「経絡」ですね。これを数千年の月日を重ねて「やっぱりここは何々に効く」となり、経絡上(線)に点(ツボ)を特定してきました。そしてその時代の人達が独自の名前を付けました。

「言語区」などはまだ現代でもはっきりした点(ツボ)が分かっていなく、この区間に失語に効くと言うことです。

数年先、数百年先に区間から点(ツボ)になる時が来るかもしれませんね。

ちなみに、「言語区」の下には言語中枢神経があります。「言語中枢神経」という言葉が出来る前から「言語区」として認識していた事は注目するべきところだと思います。

これに関節の動きを良くする滑利関節を加えます。

脳卒中の改善は本人の忍耐と根気が、重要な鍵になります。

症状が酷ければ一生かけて向き合って行く事になります。

「推拿療法」をもって少しでも生活の質が向上するようにしたいと思います。

予防
脳卒中は、治療よりも予防が大切です。
高血圧と糖尿病はコントロールし、コレステロール値が高ければ下げて禁煙、薬物禁止、適量飲酒、運動、減量などリスクを減らすようにします。