腰痛

腰痛は死ぬまでに一度は体験するであろうと言われている症状です。

ひとえに腰痛と言っても腰痛症(急性腰痛症・ぎっくり腰・慢性腰痛症)・腰椎椎間板ヘルニア・ 変形性脊椎症腰部脊柱管狭窄症・腰椎分離症・骨粗鬆症・梨状筋症候群・腰椎すべり症( 腰椎分離すべり症 ・ 腰椎変性すべり症 )・脊椎圧迫骨折・腰椎横突起骨折・尾骨骨折・亜脱臼と非常に沢山の種類があります。

すべてを詳細に説明すると非常にたくさん話をしなければならないので、ここでは大まかに分類して説明をしていきます。

まず、腰痛の症状ですが主に①腰部の痛み②筋肉の強張り③下肢の痺れ④筋肉の弛緩⑤麻痺などが挙げられます。

①腰部の痛み
②筋肉の強張りは、個人差はありますが比較的腰の状態はマシです。
③下肢の痺れ
④筋肉の弛緩
⑤麻痺、は比較的腰の状態は悪いです。

もちろん正確な診断をするには整形外科に行ってレントゲンやCT、MR等の画像診断が必要です。

画像診断(レントゲン・CT・MR)を使うと骨がずれている、折れている、またズレたり骨折をしている為に神経や脊髄を圧迫しているなどがよく分かります。

実は、中国では腰痛の80%は推拿科(推拿療法)で治療をしていて、頚椎疾患、腰椎疾患を含む脊椎疾患専門といった感じです。

もちろん理論上、漢方、鍼灸治療で腰痛治療は可能ですが漢方や鍼灸より効果のある方として推拿療法と言われています。

例えばレントゲンで(中国では推拿科でレントゲンを撮ります)明らかに腰の骨が左右どちらかに動いていて神経を圧迫し痛みを訴えている場合、骨の位置を元に戻す事によって痛みは改善されます。

漢方や鍼を使って骨を元に戻すことが出来るなんて中国でも思っていません。

写真は中国の病院内「推拿科」で行われている風景です。



中医学的腰痛の考え方《弁証論治》
中医学でも腰痛の原因は西洋医学と基本は同じ考えです。

腰部軟組織の病変、椎間板病変(ヘルニア)、腰部関節炎、腰椎病変及び骨折、老年性骨粗鬆症、内臓器質病変(腎炎・結石等)によって腰痛が発生していると考えています。

腰痛の分類
日本とは捉え方や名前が少し違ったりしていますが、中国での腰痛分類です。

1急性腰肌捻傷
:急性ぎっくり腰です

2慢性腰肌労損
:慢性疲労による慢性腰痛です

3退行性脊柱炎
:腰椎退行性変成(腰部脊柱管狭窄症・腰椎分離症・骨粗鬆症・腰椎すべり症)及び無菌性炎症による慢性腰痛の1種です

4第三腰椎横突総合症
:第三腰椎横突起に付着する筋肉、筋膜、靱帯損傷、及びその周辺神経圧迫による腰痛。別名:第三腰椎横突炎です

5腰椎間盆突出症
:椎間板突出症候群(椎間板ヘルニア)です。

6梨状肌損傷
:梨状筋症候群です

7腰臀部筋膜炎
:腰臀部筋膜炎による腰痛です。

8胸腰椎圧縮骨折
:腰椎圧縮骨折による腰痛です。

9腰仙骨部骨格発育異常
:骨格発育異常による腰痛です

10仙腸関節捻挫傷
:仙腸関節捻挫傷による腰痛です。

大体これぐらいに腰痛を分けます。

ここでは内臓疾患や悪性腫瘍等による腰痛はあえて外しています。

これらをふまえてさらに中医学的腰痛の原因は大きく2つに大別されています。

ⅰ外感(外側の原因)
:「気候の変化」冷えによって起こる腰痛など

ⅱ内傷(内側の原因)
:年齢による腰痛・「内臓疾患」腰痛を伴う生理痛など・「疲労」「打撲」腰を打って内側に傷を受けるなど(腰部軟組織の病変、椎間板病変(ヘルニア)、腰部関節炎、腰椎病変など)

腰痛は外感内傷によって筋肉の損傷、神経の損傷、骨の損傷を受け、腰部の痛み、筋肉の強張り、下肢の痺れ筋肉の弛緩、麻痺などが起こると考えています。

例えば、慢性腰肌労損:慢性疲労による慢性腰痛、急性腰肌捻傷:急性ぎっくり腰も冷えによって起こる腰痛なら、症状として腰痛・腰、下肢の冷え・痺れ・温めると楽になる・舌質は淡白で胖大、舌の苔は白などが現れています。

これは中医で言うと「湿温表証」なので治療方法は温経散寒(経絡を温めて寒邪を散らす)となります。

治療はよく腰痛に使うツボ+温経散寒(経絡を温めて寒邪を散らす)のツボを取っていきます。

例2:急性腰肌捻傷:急性ぎっくり腰も「元気が無い・疲れ易い・気短・腰がだるい・力が入らない」などの症状があれば気の虚弱と考え、これを弁証で「気虚証」と見なします。
気虚(気の虚弱)ならば気を補う治療方法を行うので治法は気を補充する「補気・補法」となります。

治療はよく腰痛に使うツボ+補気のツボを加えて行っていきます。
(中医学的には腰痛にも数種類あり、それぞれによって使い分けるツボがあります)

ギックリ腰とは一般的に重い物を持った時や急な体幹の捻転時におこる急性腰痛を指し、正しくは「急性腰痛症」と言われています。

1ギックリ腰による痛みがあると腰部周辺の筋肉が収縮して痛みの拡散を抑えるのですが、収縮しなくてもよい筋肉まで収縮してしまって動きが鈍くなります。

2筋肉が収縮して痛みの拡散を抑え続けると筋肉の異常収縮が続くので痙攣が起こり、これがしこりや触ると硬くなっている箇所になります。

異常収縮が続くと痛みの拡散は抑えられますが、血管も圧縮するので血流不足になり、栄養と酸素を運んでいる赤血球の流れが悪化して傷の修復が遅れる事になります。

血行が悪いと修復時間がかかり、神経の圧迫や血流不足により時には痺れの原因にもなります。

このようにギックリ腰は何らかの原因によって腰部が損傷し痛みが発生しています。

推拿療法は上記に記載した事を期に治療を行います。

急性腰痛は筋肉の損傷によるものなのか、骨の損傷によるものなのか、内臓疾患によるものなのか、はたまた気候変化のせいなのか、損傷部位、原因によって治療方法も手技手法も変わります。

こういった総合判断を中国医学では弁証論治(べんしょうろんじ)と言い、弁証論治で腰痛の原因をつかみ推拿の手技、適切なツボを選び出すところが按摩、マッサージ指圧、柔道整復師(整骨院、接骨院)と大きく違う点です。

痛みによる筋肉の異常収縮が続く場合は筋肉を緩めて痛みを取り、中国医学(以後、中医学)では松筋止痛(そんじんしつう)と言います。日本語で意味は松=リラックス・筋=筋肉・止痛=日本語と同じ。

筋肉を緩めて痛みを取る。
損傷部位を治すのは血液です。
中医学の推拿療法の治療方針を言うと治法:松筋止痛・活血化瘀となります。
松筋止痛は緊張している筋肉をリラックスさせて痛みを取るので優しい手技手法を使い、最も効果的に効果のある場所を選びます。
この場所がツボで、専門用語で取穴と言います。
取穴もギックリ腰による痛みの箇所によって選んで取穴をするので微妙に違います。

年齢が上がって腰痛を引き起こす事を中医学では腎虚による腰痛とも言い、腰痛の原因の一つに腎虚があれば腎の元気を上げる事も必要になるので治療方法にも腎臓を補充する意味の補腎が加わります。

ギックリ腰による腰痛に対して大体がこの様に推拿療法を行います

中医学推拿療法はただ単にギックリ腰に効果があると言う訳ではなくもっともっと奥が深いです。

以上が大体の流れです。

症状によっては一回、二回で改善する症状もありますが、症状によっては時間のかかる症状もあります。

メモ:
推拿療法では様々な腰痛の症状に対して非常に有効ですが、変形した骨の状態を元に戻す事、例えば骨の変成によって脊椎の間が狭くなる「腰部脊柱管狭窄症」の脊柱の間を広げるなどは出来ません。
しかし、推拿を受け続ける事によって「腰部脊柱管狭窄症」の症状は改善されます。

実際のところ西洋医学でも腰痛は科学的に解明できていないところは沢山あります。

他にも変形性脊椎症・腰部脊柱管狭窄症・腰椎分離症・骨粗鬆症・腰椎すべり症( 腰椎分離すべり症 ・ 腰椎変性すべり症 )・骨折後も推拿を受け続ける事によって症状の改善がみこめます。